ココロトピックス

2021/07/14

No.116

「健全な肉体」にも必要なメンタルケア

東京オリンピックがいよいよ開幕を迎えました。 「より速く、より高く、より強く」。人間の肉体の限界に挑むトップアスリートは、わたしたち一般人よりも強靭なメンタルを持つと思われがちです。ほんとうにそうでしょうか。


自身の「うつ」を公表した選手も

今年5月、テニスの全仏オープンの開幕を前に、大坂なおみ選手の発言が大きな波紋を呼びました。試合後に義務づけられている記者会見に応じないというのです。
実際に、1回戦に勝利し、その後の会見を欠席した大坂選手に、大会主催者は165万円の罰金を課し、会見拒否を続ければ失格になると警告しました。
「記者会見を通じたファンサービスも必要」「わがままを言うようではプロ失格」といった批判が寄せられました。
しかし、大坂選手が「会見拒否は自身のメンタルを守るため」「2018年の全米オープン初優勝以降ずっとうつに苦しんできた」と会見拒否の背景を明かすと、多くのアスリートが大坂選手を支持することを表明しました。


こうした状況の中、AFPBB Newsもマイケル・フェルプス(競泳・五輪で23個の金メダルを獲得)やアンドレス・イニエスタ(サッカー)など「うつ」との闘いを告白したスポーツ選手を紹介しています。


そもそもトップアスリートといえども、スポーツ選手の多くは20代30代。一般社会でいえばまだまだ若手の世代です。大坂選手でもまだ新卒にあたる年代です。このいわゆる“若手世代”に強靭なメンタルを求めている事実を考えなければなりません。



一人じゃないと感じられる環境の整備が必要

国立精神・神経医療研究センターと日本ラグビーフットボール選手会の共同調査によると、ラグビー選手の約40%以上が一か月以内にメンタルの不調・障害を経験、なかには希死念慮(生きていたくないという願望)を抱いた選手が7.6%もいたことがわかりました。(2019年12月〜20年1月に調査を実施)


そんな中、日本ラグビーフットボール選手会では、メンタルヘルスに関する専門家とともに、「よわいはつよいプロジェクト」という取り組みを進めています。


このプロジェクトでは、一般的に「弱みを見せてはいけない」という意識の強いアスリート、とりわけ心身ともにダメージの大きいラグビー選手に対してのメンタルヘルスケアの研究や啓発活動を行っています。


選手が不安な気持ちを伝えることができ、周りの人がよく耳を傾けてあげられる。 そんな環境をひろげていくことは、社会的距離が必要とされる現代においても心のつながりを大切にする意味でとても重要なことです。


「父上様 母上様 幸吉は、もうすっかり疲れ切って走れません。
何卒 お許し下さい。」
先の東京五輪で日本陸上界に初のメダルをもたらした円谷幸吉選手は、メキシコ五輪を前に自衛隊の宿舎で自らの命を絶ちました。


アスリートのメンタルケアに関してもアップデートが求められます。



いま、伝えたい「よわいはつよい」ということ。
日本ラグビーフットボール選手会
https://www.japan-rugby-players.com/topics_detail21/id=732
フェルプス氏やイニエスタも…うつに苦しんだスポーツ選手(AFPBB news)
https://www.afpbb.com/articles/-/3349684