2018/04/10
No.110
近年、他人を見下したような態度や言動をする若者が増加しているそうです。
あなたの周りに、驚くほど自己中心的で自分が一番偉いと思い込み、自分のミスを認めずに人のせいにしたり、ささいなことでキレたりする若者はいませんか。
もしかすると、彼らのそうした言動は「仮想的有能感」のせいかもしれません。
仮想的有能感は他人の能力を根拠なしに低く見ってしまう心理です。
速水敏彦中部大学教授によると、こうした心理を持つ若者は無意識に他人はみなたいしたことがないと高見から見ることで、自己肯定感を持とうとします。しかしその実、具体的根拠は皆無で、本人が思い込んでいるだけの仮想の有能感なのです。
少子化の時代に育った最近の若者は小さい頃から蝶よ花よと育てられたことで、自分は一番偉いと思い込んでいます。目が向くのは楽しいことばかりで、幸福を掴むための苦労も知らぬまま育っているのです。そんな若者たちが成長して厳しい現実に直面すると、それまでの自信が大きく揺らいでしまうことになりますが、そんな危機的心理状態で発生するのが、他人を見下すことで自分の自信を保とうとする仮想的有能感です。
仮想的有能感を持つ若者たちはみな、横柄で人を見下したような態度や言動を示します。
彼らはこう思っています。世の中にはダメで気の利かない人が多い。仕事の手際が悪く、自分の代わりに大切な役目をまかせられるような有能な人は少ない。常識のない人が多く、簡単なこともわからず、話し合いの場で無意味な発言をする人が多い。努力しなくても偉くなる人が少なくなく、たいした人間でなく、知識や教養もないのに偉そうにしている人が多い。
そんな若者たちは自己中心的で、自分に関係することには敏感で激しく反応しますが、自分に関係がないことには無関心で他人への共感性が乏しいのが特徴です。自分の言動で他人がストレスを受けていることにはまったく気づかず、自分だけがストレスを受けていると感じます。
そして、ストレスに弱く、ちょっとしたことで落ち込んだり、傷ついたりしてしまいます。しかし、努力は嫌いで、他者が自分を評価しなかったり、意見を聞き入れてもらえないと、相手の理解力が足りない、相手が悪いと考えがちです。一方、他人が失敗すると、待ってましたとばかりに相手を批判して自分が上だと示そうとするなど、まことにやっかいです。